Nike Kobe XI(11) Elite Low Performance Review
- テストカラー:Achilles Heel(822675-670)
- 主な機能:Flywire Technology, Flyknit, Full-length Lunarlon Drop-in Midsole, Heel Zoom Air Unit, TPU Internal Heel Counter
- 着用した主なプレイヤー:Kobe Bryant, DeMar DeRozan, Isaiah Thomas
- 価格:¥22680(国内)・$200(海外)
Introduction
今回はコービーの11thシグネチャーのパフォーマンス・レビューです。
コービーの引退が急遽決まったためでしょうか?
今までとは発売の順番が前後し、このエリートバージョンが先に発売されました。
このカラーは通称“アキレス・ヒール”。
右足の紋章はアキレス腱の語源になった、古代ギリシャの英雄アキレスをイメージしたものだそうです。
また今作はハイカットの発売予定はなく、エリートも通常版もすべてローカットとの事。
バッシュとしての基本構成、シルエットは“Kobe IX(9)”に良く似ています。
比較しながら機能の細部を見ていきたいと思います。
TRACTION - 6 / 10
コートをグリップする性能。 良くグリップするほど高評価。
アウトソールは中央部分は前作“Kobe X(10)”のノジュールのような小さな突起が並び、エッジ部分は針を刺したような微細な穴が並んでいます。
クリアラバーの質感は柔らかく、粘性もなかなか高め。
プレーしてみると最初はキュッキュッと申し分ないグリップ性を発揮。
プレーを続けると、3分も経たないくらいでスキール音はしなくなり、毎回少しスライドして止まります。
アウトソールを見るとホコリで真っ白に。
ラバーが質的にホコリを集めやすい事と、溝が浅いアウトソールパターンが原因かと。
すぐにキーとなる接地ポイントがホコリで覆われてしまいます。
かなり頻繁に、と言うより少しでもプレーが止まったら必ず拭くべきかと。
綺麗なコートでもどこからかホコリを集めてきて滑り出します…。
似た構造の“Kobe IX(9)”は土踏まず部分がツルツルで、ここが接地した際に盛大に滑りました。
今作では土踏まず部分にもしっかりパターンが刻まれ、その症状は無くなっています。
別の形でトラクションが弱くなっているのは残念な限りです…。
トータルで平均に届かないレベルのトラクションかと。
幸いな事に市販モデルにもBlack History Month(822522-914)などソリッドラバーが使われたカラーも存在します。
もしより良いパフォーマンスを求めるならソリッドラバーのカラーを選ぶべきでしょう。
Nike iDでもラバーの種類を選べますが、クリアラバーは避けた方が良いでしょう。
CUSHIONING - 8 / 10
「衝撃吸収性能」/「反発性能」。 両性能を合わせて総合的に評価。
ルナロンは、インソールとミッドソールが一体となったドロップイン・タイプ。
“Kobe VIII(8)”や”Kobe IX(9)”と基本構造はほぼ同じです。
異なる点としては、VIII(8)のシャンクプレートや、IX(9)の中足部のTPUカウンターなど、アッパーに存在した追加パーツは今回は一切ありません。
ルナロンはフォアフット部分の厚さは今までとほぼ同じですが、中足部からヒールにかけては厚みが増しています。
またルナロン表面には布地が貼られ、よりナチュラルな足当たりに。
ルナロンの上に通常のインソールが貼ってあるのか?それともルナロンに布地だけが貼ってあるのか?と良く聞かれますが、後者が正解です。
そのルナロンのクッション性ですが、衝撃吸収性は申し分なし。
厚くなった分で不安定になる事もなく、安定したパフォーマンスを発揮します。
また、中足部が厚くなった事でシューズ全体の剛性が上がり、足裏全体でジャンプや切り替えしをする際はなかなかの反発性があります。
ヒールのズームエアは、それ自体の反発性以上に、カカトが沈みこむのを防止し、足のアーチ維持に一役買っています。
ヒールから中足部周りはなかなか好感触。
一転、フォアフットのファーストステップやジャンプの踏み切りは微妙な感覚。
フォアのルナロンは薄めで、さらに六角形のグリッドが入っていて、かなりソフト。
アウトソール自体にも剛性はほとんどないため、フォアフットは体重を軽く掛けるだけでクニャッと曲がり、復元力・返りは弱め。
普段が剛性あるバッシュを好んでプレーしてるせいもあってか、あまりの返りの弱さに何度か転倒してしまいました。
反発性はヒールから中足部は9点。フォアフットは6点くらいでしょうか。
それでも厳しい評価となった“Kobe IX(9)”から更に構成パーツを削っているなら“反発性はさらに無くなってるんじゃないか?”と危惧してましたので、正直トータルでのクッション性は期待以上でした。
フォアフットのみでステップする際に気を付ければ、なかなか快適にプレーできます。
COURT FEEL - 8 / 10
コートに対する接地感覚。 コートを近く感じれるほど高評価。
FIT/LOCKDOWN - 7 / 10
足に対するフィット性能。 足と一体感があるバッシュほど高評価。
“Kobe IX(9)”以降、エリートバージョンには必ずフライニットが使われてきたコービーシリーズ。
前2作では表面はフライニットを確かに使ってありましたが、その裏地にはカッチリしたTPU素材を貼り付け、フライニットの特徴であるナチュラルなフィット感と通気性はほぼ完全に失われていました。
今作にも補強にTPU素材を使っていますが、面として使うのではなく、糸状のTPUストリングとして使用。
そのストリングをフライニットの合間に等間隔で混ぜて、編み込んであります。
このアップグレードは素晴らしいの一言。
おそらくコービーエリートのフライニットで、最もナチュラルなフィット感でしょう。
“Kobe IX(9)”ではヒールの成型が甘く、パディングも薄いためヒールの抜け感がありました。
今作は成型は良くなり、パディングも厚めに入っていて、抜け感はありません。
マイナスポイントはまたもやフォアフット部分。
シューレースの最下列の位置が高過ぎ、つま先周りのフィット感調節が出来ません。
しかもフォアのルナロンが薄くて沈むため、その空くスペースはかなり大きめです。
“Jordan Super.fly 4”や“D Rose 6 Boost”でも指摘しましたがこの構造はバッシュとして如何なものかと…。
自分の様にジャストサイズで着用したいプレイヤーは、通常のナイキサイズからハーフサイズダウンで良いでしょう。
Nike iDではフルレングスズームも選択できますが、この場合フォアの沈みが解消されると思われるので、通常サイズで良いかもしれません。
いずれにしても要試着モデルです。
SUPPORT - 7 / 10
怪我を防止するサポート性能。 安定感があり、左右のブレ・捻れがないほど高評価。
LATERAL TRANSITION - 6 / 10
左右方向への動きのスムーズさ。 スライドやクロスオーバー時など横方向へ動きやすいほど高評価。
HEEL-TOE TRANSITION - 8 / 10
縦方向への動きのスムーズさ。 通常のランニング、カットイン時など前方向へ動きやすいほど高評価。
BREATHABILITY - 7 / 10
通気性能。 通気が良いほど高評価。
DURABILITY - 8 / 10
耐久性能。 耐久性が良いほど高評価。
WEIGHT - 9 / 10
バッシュの片足の重さ。 軽いほど高評価。
Final Conclusion
このカラーは“Kobe IX(9)”と違った形でトラクションが弱く、パフォーマンス全体に大きく影響しましたが、ソリッドラバーのカラーを選べば解決されます。
それ以外のIX(9)でイマイチだった箇所もしっかりと修正され、IX(9)のアップグレードと言えるパフォーマンス。
コービーシリーズの“Minimal Concept”(=構成パーツを極少にして高パフォーマンスを目指す)の中で、試行錯誤と進化がはっきり感じ取れる1足です。
IX(9)が好きなプレイヤーには堪らない1足かと思います。
また先に少し触れましたがNike iDではルナロン・インサートが、次の3種類から選択可能に。
“ルナロン単体”・“ルナロン+ヒールズームエア”・“ルナロン+フルレングスズームエア”
ルナロンにフルレングスズームの組み合わせは“Lebron XI(11)”以来初ですね。
かなり高額になりますが、より反発性・剛性を求めるならフルレングスがベストでしょう。
ちなみにコービー自身はオールスターもシーズン中もクリアラバーのヒールズームタイプの着用がほとんどなので、コービーはソフトな感触が好みの様です。
また、NBAのコートならラバーの質も関係ない様子。
一般ユーザーは毎回NBA並みのコートではプレーできないので、やはりソリッドラバーのアウトソールは絶対でしょう。
-
TRACTION - 6/10
-
CUSHIONING - 8/10
-
COURT FEEL - 8/10
-
FIT/LOCKDOWN - 7/10
-
SUPPORT - 7/10
-
LATERAL TRANSITION - 6/10
-
HEEL-TOE TRANSITION - 8/10
-
BREATHABILITY - 7/10
-
DURABILITY - 8/10
-
WEIGHT - 9/10