Nike Kyrie 3 Performance Review

- テストカラー:Black Ice(852395-009)
- 主な機能:Hyperfuse, Dynamic Flywire, Half-length Inner Bootie, Heel Zoom Air, Phylon Midsole, TPU Shank Plate, TPU Internal Heel Counter
- 着用した主なプレイヤー:Kyrie Irving, Jarrett Allen,Iman Shumpert, J.R. Smith, Channing Frye, P.J. Tucker,,James Johnson,Justise Winslow,Isaac Okoro,Shake Milton,Monte Morris,Scottie Barnes,Bam Adebayo
- 価格:¥16,200(国内)・$120(海外)
Introduction
今回はKyrie Irving(カイリー・アーヴィング)の3rdシグネチャー"Kyrie 3(グローバルラスト)"のパフォーマンス・レビューです。
先日「EPラスト」をリライトレビューしたばかりで「また同じモデル??」と戸惑う方もいるかもしれませんが、EPとグローバルの間にはけっこうな機能差が存在します。
これは今作に限ったことではなく、基本どのモデルでもEPとグローバルには差があり、場合によっては別モデルと思える程違う事も。
SNSでは既にかなり語っていて浸透している印象の話題ですが、同モデルのEPとグローバル各々をレビューに書き起こしての比較は何気に初めてで個人的にも楽しみです。
早速細部を見ていきたいと思います。
TRACTION - 10 / 10
コートをグリップする性能。 良くグリップするほど高評価。
前後方向の「ヘリンボーン・パターン」をベースに、左右のエッジ部分のみ「ブレード・パターン」のアウトソール。
ここまではEPラストと同様。
異なるのはラバーの種類で、耐摩耗性に優れたXDRでなく「ソリッド」と「トランスルーセント」の組み合わせ。
ソリッドはややソフトで、粘着性は低め。
トランスルーセントはやや硬く、粘着性は高めです。
ヘリンボーン部分は若干硬め。ブレード部分はソフトになっています。
ブレード部分がやや盛り上がっている点はEPラストと同様で、この部分が優先的に接地します。
そのため粘着性の高いトランスルーセントはホコリを結構吸着しますが、吸着量の割には影響は少なめ。
左右方向では全く影響を感じませんが、前後方向では多少アリ。
EPラストよりも若干滑るようにはなっていますが、一度拭けばしばらくはグリップしてくれます。
未だ「最高レベルのトラクション」と言って良いレベルです。
CUSHIONING - 9 / 10
「衝撃吸収性能」/「反発性能」。 両性能を合わせて総合的に評価。
「ファイロン・ミッドソール」に「ヒール・ズームエア」を埋め込んだクッション・セットアップ。
ファイロンの質感は硬めで弾力性はやや低めな質感。
EPのレビューでは「ややソフト」と表現しましたが、2017年の感覚で書いた原稿をそのまま載せました。
ですが最近改めてEPのミッドソールを触ってみると、今作グローバルラストと感触は変わらず硬め。
2017年ではこれでも「ソフト」と感じるほど、現在とは基準が違ったのだと再確認して驚きました。
そのミッドソールこそ「EPラストとグローバルラストの最大の違い」です。
色々なモデルのEPとグローバルを履き比べた結果ですが、例外なく「グローバルの方が厚い」。
これにより「ソール剛性強化」と「ズームエア(エア)がしっかり格納」の効果が得られます。
前者は中身が詰まって曲がりにくくなるだけの話で想像しやすいと思うので説明は割愛。
後者は少し説明します。
まずEPラストもグローバルラストも「ズームエア(エア)のサイズや厚さは同じ」。
その上でEPはミッドソールだけが削られるため、ズームエアやエアによりダイレクトに乗る形になり、ブヨブヨした感触が増すと言う流れです。
自分にとってこのブヨブヨは「遅れ」や「アンバランスさ」の原因に感じるため、EPよりグローバルを好んで履いています。
※これが「衝撃吸収性」と感じられる方の場合はまた違った評価になるでしょう。
※また足型的にグローバルの幅や高さがキツイ場合も違ってくると思います。
※これはあくまでグローバルが合う足型で履いた場合のレビューですので念のため。
ミッドソールは厚くなりましたが、全体的に厚くなっているため後傾のバランスはEPと変わらず。
ただし、今作のフォアは厚くなったことにより、体重を掛ける事で圧縮が可能に。
これによりインソールを交換せずとも、かなりフラットに近い状態でプレー出来ます。
EPでは、左右方向と接地感が最強クラスで、それ以外がイマイチでした。
今作ではEPの良い部分を伸ばしつつ、前後方向の動きやすさとジャンプしやすさがプラス。
期待以上だったのはEPの良い部分が更に進化していた事。
対人ディフェンスはもちろん、スクリーンをかわす際、ヘルプでブロックへ行くスピードなどオフボールでも異様なほどクイックに動けました。
ソールの屈曲からの復元はEP同様にゆっくりなままなので、前後方向では加速感こそ無いものの、十分に平均以上の推進力があります。
ここまで書いておいて満点にしなかった原因は「クイック3がとにかく打ちにくい」。
シューズ内で足がフォアを常に押し込んだ状態なため、普段のクイックモーションのステップではコートが上手く押せません。
ミッドレンジの2モーションは打ちやすいので、強く踏み込んだ時は反応してくれるクッションです。
ただしクイックで打ちたい状況で踏み込みを強くしたらディフェンスの餌食なので、解決策としては「いつもより若干内旋を強めて打つ」のがベストでした。
もしくは「敢えて毎回ステップバックを使う」のもアリでした。
この辺りを上手く乗りこなせたらパーフェクトな感覚になるかと。
自分は上手くできた、と言えるレベルまでは未だ達せてないためこのスコアです。
また体重が軽かったり、足首の固めが苦手なプレイヤーは「フォアを押し込むことが出来ない」かもしれません。
それくらいフォアは硬いです。その場合は体感はスコア以下になってしまうでしょう。
ともあれ個人的にはかなり満足できるクッションで、着用時は毎回普段以上の運動量でプレーできました。
にもかかわらず不思議と筋肉にも関節にも全く疲労が来ず、ちょうどウォームアップが完了したかの様な感覚に。
思えば昔のバッシュはみんなこんな感じだったなぁと思ったり。。
※市販のインソール「スーパーフィートのグリーン」との相性は一長一短。後傾をフラット寄りに整えてくれますが、元のアーチサポートが高めなのでアーチ過剰になる可能性があります。
※"Nike Zoom BB NXT"の「リアクト・インソール」との相性も同様。トーボックスの空間を埋めてくれますが、若干吸収性が過剰になる感覚です。
※原点に戻って純正の青いオーソライト調のインソールが一番バランス良く感じます。
※インソール交換はスコアに含めていません。
COURT FEEL - 10 / 10
コートに対する接地感覚。 コートを近く感じれるほど高評価。
FIT/LOCKDOWN - 9 / 10
足に対するフィット性能。 足と一体感があるバッシュほど高評価。
「フォアフット・インナーブーティー」をメッシュベースの「アッパー」が包むオーソドックスなセットアップ。
フォアフットの屈曲部分にはフライワイヤーを2列だけ設置。
先にレビューしたEPでアッパー強化の目的で使われていたトゲトゲの"Kurim(キュリム)"は非搭載。
これはEPやグローバルのラストは関係無く、このブラックアイスのカラーがそう言う仕様なだけです。
キュリム不在のアッパーはジムレッドのEPに比べだいぶソフトになっていますが、ヒールカウンターはあるのでプレーするには十分な強度は確保されています。
そして肝心のEPグローバルの相違点は「トーボックスの高さ」。
EPラストと言うと幅広なイメージが定着している印象ですが、履き比べるとソール自体の幅はほとんどのモデルが同じ。
その代わりアッパー成型を高くし、ミッドソールを薄くし「垂直方向に余裕を持たせた構造」になっています。
更に細かく見ていくと、ミッドソールは全体に薄くなっていますが、アッパー成型の高さ確保はトーボックスがメイン。
結果、ヒール周りに比べてフォアの変化幅が大きく、グローバルに合う足型だとフォアだけがシューズ内部でかなり遊んでしまいます。
今作はグローバルの中でもややトーボックスに高さがありますが、それでもEPよりはかなり空間はタイトに。
初回着用の初め15分はフォアのクッションの押し込みができず、つま先がそのタイトになったアッパーに当たって痛かったです。
ですがウォームアップが完了し体温が上がると同時にフォアの押し込みが出来るようになり、足が当たることはなくなりました。
それでもやや小指側に空間を感じますが、許容範囲。
EPでもトーボックス以外のフィットは良かったモデルなのでその他部分については言う事無しです。
※※※サイズ選びについて※※※
グローバルラストのマイサイズ「27.5cm」を購入。
普段のソックス2枚ではキツく、ソックス1枚に減らしてジャストに。
マイサイズからハーフサイズ(0.5cm)アップは必須でしょう。
またグローバルの中でも幅は狭めの部類に入るため、足型によってはフルサイズ(1.0cm)アップもありかもしれません。
※「スーパーフィートのグリーン」に変えた場合も同じサイズ感で良いです
※"Nike Zoom BB NXT"の「リアクト・インソール」に変更の場合は若干高さがキツくなるので少し注意が要ります。
※インソール交換はスコアに含めていません。
SUPPORT - 8 / 10
怪我を防止するサポート性能。 安定感があり、左右のブレ・捻れがないほど高評価。
フォアの押し込みが出来ない場合や、足指の形状によってはEP同様につま先が当たって痛む可能性があります。
またこのカラーに関してはキュリム非搭載で他カラーに比べて、アッパー剛性が落ちているのは事実。
カッチリしたアッパーでないと足首が不安に感じる方はキュリム搭載カラーの方が無難かなと。
それ以外はソールの安定性・捻れ剛性などしっかりした作りで、トータルのサポート性は優秀なレベルです。
LATERAL TRANSITION - 10 / 10
左右方向への動きのスムーズさ。 スライドやクロスオーバー時など横方向へ動きやすいほど高評価。
HEEL-TOE TRANSITION - 9 / 10
縦方向への動きのスムーズさ。 通常のランニング、カットイン時など前方向へ動きやすいほど高評価。
BREATHABILITY - 7 / 10
通気性能。 通気が良いほど高評価。
このカラーはキュリム非搭載なため、通気性は向上すると予想していました。
ですが実際は意外や意外。
今まで履いたバッシュの中で最大の発汗量。
普段あまり足から汗をかかない質なので、初回バスケの後脱いでかなり驚きました。
原因はフォアを押し込みながらプレーしている事かと思われます。
押し込みと言っても強く足指を握ったりしている訳ではなく、ほんの少し足首の固めを強くしているだけ。
そのため発汗量が増えただけで、むしろ動きやすいクッションのおかげで疲労感は普段より少なかったくらい。
ですが通気性と言う面ではマイナス。
アッパー素材は速乾性がありますが、それ以上にこのソールにしっかり乗ると発汗の方が勝ってしまいます。
他モデルよりも陰干しの時間は長めに取る必要があるでしょう。
DURABILITY - 8 / 10
耐久性能。 耐久性が良いほど高評価。
EPから唯一ダウンしたのが耐久性の項目。
バッシュの耐久性の主な敵は「湿気」「高温」「紫外線」。
先の発汗量が増える話から、湿気が一番の問題になる可能性があります。
部活などで毎日履く場合は、乾燥が間に合わない可能性もあるためローテーションで履く前提での購入が良いでしょう。
またフォアのファイロンを強めに押し込みながら履くので、他のバッシュよりもヘタりが早く来る可能性も考えられます。
EPでもファイロン単体のフォアはヘタる懸念はありましたが、あちらはファイロン自体が薄く、影響は気にする必要が無いほど沈み幅が小さかった印象です。
それからトーボックスは低くなったとは言え、やや膨らんだ形状。
トードラッグで擦れたり、他プレイヤーとぶつかることは、他のバッシュに比べ正直多くなります。
個人的に一番懸念しているのはフォアのヘタリですが、その時はリアクトインソールが合うようになる気がするので楽観視しています。
色々言いつつ、トータルの耐久性は高い部類に入るかと。
WEIGHT - 10 / 10
バッシュの片足の重さ。 軽いほど高評価。
約378g(27.5cm・片足)
Final Conclusion
今作をまとめると「素足感覚」。
マイケル・ジョーダンがエアジョーダン製作に当たって、ナイキに要望していた機能がこの感覚。
クッションが主張せず、ただ足の延長としてだけ機能してくれ、シューズを履いているのを忘れてプレーできます。
左右方向の動きと接地感に関しては、本当に「歴代最強」と言っても過言ではありません。
悔やまれるのは発売当時になぜ深追いしてグローバルを試さなかったか…。
発売から数年経って、しかもカイリー本人がナイキから離れ、現物が入手しにくいこのタイミングでの高評価レビュー。。。
正直言うのは憚られますが……かなりオススメです。
……あまりに申し訳ないので今後バッシュ検索中に今作のグローバルを見つけたらSNSでシェアしていこうと思います。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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TRACTION - 10/10
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CUSHIONING - 9/10
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COURT FEEL - 10/10
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FIT/LOCKDOWN - 9/10
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SUPPORT - 8/10
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LATERAL TRANSITION - 10/10
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HEEL-TOE TRANSITION - 9/10
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BREATHABILITY - 7/10
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DURABILITY - 8/10
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WEIGHT - 10/10